ラテン語の文法基礎

(工事中)


学生から、「教科書が判りにくい」という声を聞きます。 私の努力が足りないせいもあるでしょうけど、そうかな? そう思っていたら、ある先生と話をしていて気づいた。 「最近の学生は“こういうもの”を語学の教科書と思ってんのよ」 “こういうもの”とは、イラストが豊富で、カラフルで、その語学の背景などが楽しく盛り込まれているもの。 つまりモチベーションを高めてくれるような教材を盛り込んだものが“いい教科書”のようだ。 プリント(私が作った)のほうがまだまし。いっそ教科書をつくって──という声も。 残念ながら私は最近の学生にウケるような教科書は作れない。 それで、せめて、私なりにまとめたものをこのホームページ上に掲載することで補いたいと思う。
目 次   序章 

第1章 ラテン語の動詞──(1)動詞の基礎と活用

第2章 ラテン語の名詞──(1)名詞の基礎と変化

第3章 

第4章 

第5章 

第6章 

第7章 

第8章 


序章 ラテン語に限らず、ギリシア語でも動詞の活用や名詞などの格変化を覚えるのが大変、という人は少なくないはず。 語学である以上、「覚えなきゃいけないもの」は覚えねばならないのです。 しかし、覚えるためのコツを自分なりに見つけることができれば、それに越したことはない。 そこで、次に示すのは、ラテン語で使う品詞を、活用・変化を中心にまとめてみたものです。 活用・変化を中心としたラテン文法の全体図、とまではいきませんが、それに近いものです。 これを参考に、自分なりに把握する手助けにしてください。
品詞と、変化・活用を中心とした全体一覧

1. 活用

態(voice)・法(mood)・時称(tense)・人称-数(perspn-number)

 
■動詞

基本4形【辞書の見出しを含む4項目】
【@能動態・直説法・現在1sg.、A能動態・不定法・現在、B能動態・直説法・完了1sg.、C目的分詞】

(活用のタイプ――4種)
第1活用(-are)、第2活用(-ere)、第3活用(第3b変化を含む)(-ere)、第4活用(-ire)
*その見分け方――不定法の語尾による

▲態――能動態・受動態
▲法――直説法・接続法、 不定法、 命令法
▲時称――上記のそれぞれの態・法に応じて、各時称ごとに変化する。
▲人称-数――上記のそれぞれ態・法・時称に対し、
       (主語に対応して)6つの人称語尾によって示す。※主語の性は示さない。

 

能動態──受動態
   

直説法

接続法

命令法

不定法

動名詞/動形容詞

分詞

時称

未完了系

現在

現在

現在

現在

 

現在

過去未完了/(半過去)

過去未完了/(半過去)

       

未来

 

未来

未来

 

未来

完了系

完了/(過去)

完了/(過去)

 

完了/(過去)

 

完了/(過去)

目的分詞

過去完了/(大過去)

過去完了/(大過去)

       

未来完了/(先立未来)

         

2. 変化

性・数・格
 
〈名詞型〉
■名詞【@sg.nom.、Asg.gen.、B性】
〈変化のタイプ――5種〉
第一変化(-ae)、第二変化(-i)、第三変化(-is)、
第四変化(-us)、第五変化(-ei)
*その見分け方――単数・属格の語尾による

■形容詞【@sg.nom.m.(-us)、Af.(-a)、Bn. (-um)】
    【@sg.nom.m./f.(-is)、An. (-e)】
    【@sg.nom.m./f./n. (-ens)】
〈変化のタイプ――3種〉
:名詞の第一変化・第二変化・第三変化の応用
:→副詞に変化可能

(動詞的中性名詞)

〈無変化〉

■副詞(←形容詞)
■前置詞

(動詞的形容詞)

〈代名詞型〉
■代名詞(人称代名詞・(3人称)再帰代名詞、
     指示代名詞(形容詞)・不定代名詞(形容詞)、
     強意代名詞 ipse,-a,-um・限定代名詞 idem,eadem,idem
     関係代名詞(形容詞)・疑問代名詞(形容詞)
■数詞  
■代名詞的変化の形容詞
■接続詞




■間投詞

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第1章 ラテン語の動詞──(1)動詞の基礎と活用

1.ラテン語の動詞――(1)基本と活用

1-1ラテン語の動詞――辞書で
ラテン語の辞書で動詞をひくと、たとえば

amo,  amare,  amavi,  amatum

とでている。これらはその動詞の基本形。つまり、
その動詞を使う上で欠かせない基本的な情報をわたしたちに与えている。(具体的には@直説法・能動態・現在・1人称単数、A不定法・能動態・現在、B直説法・能動態・完了・1人称単数、C目的分詞。→これらについては後述)
 この辞書の見出しになっている基本形@ amo は「私は愛する」の意味で、これは文法的意味として正確には、[直説法・能動態・現在・1人称単数]であることを示す。つまり、ラテン語の動詞は、

法,  態,  時制,  人称・数

という文法的性格をもち、その動詞一語でこれらの文法的性格を現わしているのである(法, 態, 時制については→後述)。
 amoというこの動詞は「(私は=1人称単数)愛する」を意味する。amoという語をみたとき、この一語ですでに人称・数(「私は」)が示されていることに注意。このようにラテン語の動詞は、主語の人称・数に対応する形をとり、主語を示す。したがってラテン語の動詞一語で文章〈主語−述語〉を成す。
※上記の動詞の5つの文法的性格のうちの[人称・数]は、同時に主語の文法的性格をも示しているのである。このように、ラテン語の動詞は主語(の文法的性格=人称・数)によって支配されている。amoの主語が「彼女は」に変われば、amatとなる。もちろんこれは動詞が同じ[直説法・能動態・現在]の場合である。
   例.vinco [ウィンコー]私は勝っている

1-2動詞の活用(人称・数)
 amo は「私は愛する」の意味だったが、辞書にはそれ以外の人称・数の形は示していない。では、「あなたは愛する」「彼らは愛する」などを言うときにはどうするのか? amo の形をもとにして、人称語尾人称・数を表わす)を付けてやるのである。そこで必要となるのは活用表(→省略)である。
〈amoの活用〉→省略

これらは、前述の5つの文法的性格のうち、〈直説法・能動態・現在〉における人称変化(人称と数)を示すのである。

1-3動詞の活用の4タイプ
 さまざまな動詞の例.

人称

1

2

3

4

「愛する」

「忠告する」

「読む」

「聞く」

不定法→

am are mon ere leg ere aud ire
sg. 1 わたしは〜する am o mon eo leg o aud io
2 あなたは〜する am as mon es leg is aud is
3 彼・彼女・それは〜する am at mon et leg it aud it
pl. 1 わたしたちは〜する am amus mon emus leg imus aud imus
2 あなたたちは〜する am atis mon etis leg itis aud itis
3 彼ら・彼女ら・それらは〜する am ant mon ent leg unt aud iunt

※ sg.は[英]singular〈単数〉, pl.は[英]plural〈複数〉 の略。
※ 〈不定法〉は正確には不定法・能動態・現在。活用のタイプによって異なる。次の1-4で説明する。
実は、ラテン語の動詞は上図のように、その動詞によって、どのような人称語尾をとるかが異なっている。例えば、
 (1) narro 語る
は[(sg.) narro,narras,narrat, (pl.) narramus,narratis,narrant]と活用するので amo と同じ人称語尾。
 (2) moveo 動かす
は[(sg.) moveo,moves,movet, (pl.) movemus,movetis,movent]と活用するので moneo と同じ人称語尾。
 (3) defendo 守る
は[(sg.) defendo,defendis,defendit, (pl.) defendimus,defenditis,defendunt]と活用するので lego と同じ人称語尾。
 (4) accipio 受け入れる
は[(sg.) accipio,accipis,accipit, (pl.) accipimus,accipitis,accipiunt]と活用するので audio と同じ人称語尾。
 このように、ラテン語の全ての動詞の活用(人称語尾の付き方)は4つのタイプがある。上図の1〜4がその典型である。それぞれ、次のように呼ぶ。

第1活用、 第2活用、 第3活用、 第4活用

※ ラテン語の動詞は、基本的にこれらの活用のタイプのいずれかである。ある第1活用動詞が、他の活用に変わってしまうことはない。
各活用の暗記 これら4つの人称変化(活用)は暗記しなければねらない。
暗記の仕方として、まず第1活用を完全に憶えよ。次に第2活用以降を憶えよ。

1-4動詞の活用4タイプの見分け方
 では、私たちが動詞を調べようとするときに、どうやってこれらの活用のタイプを見分けたらいいのか。例えば、
 destruit「破壊する(3sg.)」という動詞は、第3活用にも第4活用にもみえる。しかしこの動詞は、必ずいずれかの活用のタイプである。
 私たちはその動詞がどの活用のタイプなのかが、辞書で知ることができればよい。その手がかりは、見出しの次にあげられている不定法の形である。
 すでに1-1でみたように、辞書でラテン語動詞をひくと、基本的に4つの項目が示され、その最初の二つは例として、次のようになっている。この2項目〈不定法〉の語尾の形によって[活用のタイプ]を見分けることができるのである。

〈現在1sg.〉

〈不定法〉

〈不定法〉の語尾

[活用のタイプ]
am o, am are

are

[第1活用]
mon eo, mon ere

ere

[第2活用]
leg o, leg ere

ere

[第3活用]
aud io, aud ire

ire

[第4活用]

 基本的に、辞書では不定法の語尾だけ2項目に記される。しかし不規則動詞などは不定法の形全体を記す場合もある。例.fero, ferre「運ぶ」
 しかし「第2活用と第3活用との場合で不定法の語尾が同じスペルではないか」と思うかもしれない。しかし上で「語尾の形」と述べたのは「スペル」のことではない。後ろから2つ目の母音に注目。
 第2活用の場合は長い。第3活用の場合は短い。つまり上の例では、
   mon ere モネーレ   leg ere ゲレ
※ このゴシックの部分(後ろから2つ目の音節)は、ラテン語のアクセント規則と関係する。(→後述)この場合、monere(第3活用)は後ろから2つ目、legere(第3活用)は後ろから3つ目にアクセントがある。
 このように、ある動詞の活用は、まず活用のタイプを知り、その活用のタイプに従わせることによって可能になる。

1-5他動詞と自動詞
 ラテン語にも英語や他の言語と同様に〈他動詞〉〈自動詞〉がある。
〈他動詞〉[(略)v.a.]目的語を必要とする動詞
〈自動詞〉[(略)v.n.]目的語を必要としない動詞
※v.a.とv.n.はそれぞれ[英]verb active, verb neuterの略。activeは他(つまり目的語)に「働き掛ける」意、neuterは他への働き掛けに「無関心、中立」である意と思われる。しかし英語の文法用語ではそれぞれtransitive verb, intransitive verbと書かれる。transitiveは上記activeと同じ内容を意味する。
例. dormio, ire, v.n.「眠る」
 eo,  ire, v.n.「行く」
これらは、行為・動作の対象が無い(必要としていない)。
※eo は不規則動詞で、"ire"は語尾ではなく不定法の形そのものである。eo狽の活用は→省略。
capio,capere, v.a.「取る、つかむ」
つかまれる対象を必要とする。
他動詞にも自動詞にもなる動詞もある
ascendo,ere, v.n., v.a.「昇る、登る」
登られる対象(例.山)を明示すると他動詞(「山を登る」)になる。
 自動詞でも、主体(主語で示される)の行為・動作の対象が自分自身に向けられる場合がある。この場合は代名詞・再帰代名詞で示される(→代名詞、再帰代名詞)。

1-6その他の動詞
 (1) 形式受動詞(デポネンティア動詞)(略)v.dep.
 変位動詞、能動態欠如動詞、などの名称があり日本語で定訳がない。「形式的に受動態」「能動態の形態を欠く」といった動詞。後述。
 (2) 非人称動詞(略)v.impers.

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第2章 ラテン語の名詞──(1)名詞の基礎と変化

名詞変化

§1□動詞以外の、変化する品詞は、〈名詞型〉〈代名詞型〉の2種類に分類できる。

§2□〈名詞型〉の基本は名詞の変化で、5つの変化のタイプがある。

§3□5つの変化のタイプ全て暗記すべきだが、特に重要な変化のタイプは、第一変化、第二変化、第三変化である。

§4□中性名詞は、変化型のタイプによらず、必ず主格=対格となる。

         また、複数主格=複数対格は〈-a〉または〈-ia〉(複数属格〈-ium〉の場合)

§5□呼格は主格と同じ。しかし語尾〈-us〉の第二変化・単数のみ呼格は〈-e〉となる。

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第3章 

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