スペイン語の音 Fonología de la lengua española

4. 2. アクセント符号 Los acentos gráficos

アクセント符号は綴りの一部

 「4. 1. 強勢の規則」で説明したように、スペイン語の強勢(アクセント)規則から外れた強勢位置を持つ単語については表記に際して実際に強勢が置かれる母音にアクセント符号をつける。アクセント符号は綴りの一部だ。英語にはないことなので気をつけて覚えて欲しい。話し言葉では当然このようなアクセント符号が見えるわけではなく、強勢が音として感じられるわけだが、強勢の規則から外れる単語について覚える際には、このアクセント符号を加えた綴りを覚えることを通して強勢の位置を覚えていくとよい。

 なお下に説明するように単語が結合したり複数形になったりした結果、音節数に変化が生じてアクセント符号が必要になったり不要になったりする場合がある。

 このほか下に説明するように強勢の位置を示す目的以外に、疑問詞であることを示すことなどを目的としてアクセント符号が使われる場合がある。それはそれとして理解する必要がある。

強勢規則外の場合のアクセント符号

 改めて強勢規則から外れる単語の例を見ておこう。

  física (physics) ; matemáticas (mathematics) ; María (Maria) ; José (Joseph)

  fácil (easy) ; rápido (rapid) ; técnico (technical, technician) ; música (music)

代名詞の後置連接によって強勢規則から外れる場合

 スペイン語では動詞が不定形や現在分詞の形で使われる場合に、目的格代名詞あるいは再帰代名詞が動詞に連結することがある。また肯定命令では目的格代名詞あるいは再帰代名詞は必ず命令法の動詞に後置連接する。現在分詞および命令法(肯定)の動詞に後置連接する場合は代名詞が語尾に加わりその結果音節が加わることで、動詞そのものの強勢位置は変わらないのだが連接後の語全体における強勢位置が強勢規則から外れるためアクセント符号が必要になる。動詞の不定形に後置連接する場合は代名詞が一個だけの場合はアクセント符号は不要だが、代名詞二個の場合はアクセント符号が必要になる。

現在分詞に代名詞が連接した場合
現在分詞のみ 現在分詞に代名詞が連接
estudiando (studying) estudiándolo (studying it)
cortando (cutting) cortándola (cutting it)
mostrando (showing) mostrándomela (showing it to me)
sentando (setting) sentándose (sitting down)

 強勢の位置そのものは変化していないが全体の音節数が増えてることに意識を向けながら発音を確認してみよう。

命令法(肯定)の動詞に代名詞が連接した場合
代名詞が連接しない場合 代名詞が連接した場合
Estudia esa sección. (Study that section.) Estúdiala. (Study it.)
Corta el papel. (Cut the paper.) Córtalo. (Cut it.)
Muestra tu mano a mí. (Show your hand to me.) Muéstramela. (Show it to me.)
Diga eso a ella. (Tell that to her.) Dígaselo. (Tell it her.)

 ここでペアになっている例文は意味は対応しているが文としてはだいぶ違っている。それでも命令法の動詞そのものの強勢位置は変化していない。動詞の部分に注意しながら発音を確認してみよう。

 スペイン語の動詞の不定形は全て子音 "r" で終わり強勢は最後の音節にある。目的格代名詞はいずれも1音節で単数では母音で終わり複数では子音 "s" で終わる。したがって目的格代名詞が1個ついた場合は、動詞不定形の強勢の位置は最後から2番目の音節になり、語末が母音あるいは子音"n, s" で終わる場合の強勢規則が当てはまりアクセント符号の付与は必要ない。一方、間接目的格代名詞と直接目的格代名詞合わせて2個の代名詞が連接した場合は語尾に2音節加わるわけで動詞不定形の強勢の位置は最後から3番目の音節となり強勢規則から外れるのでアクセント符号が必要になる。

不定形の動詞に代名詞が連接した場合
代名詞が連接しない場合 代名詞が連接した場合
estudiar esa sección (to study that section) estudiarla (to study it)
cortar el papel (to cut the paper) cortarlo (to cut it)
mostrar tu mano a mí (to show your hand to me) mostrármela (to show it to me)
decir eso a ella. (to tell that to her) decírselo (to tell it her)


 ここでもペアになっている例文は意味は対応しているが文としては違っている。それでも不定形の動詞そのものの強勢位置は変化していない。動詞の部分に注意しながら発音を確認してみよう。

複数形になることでアクセント符号がとれる場合

 子音で終わる名詞や形容詞は複数形では "es" を語尾に加える。この場合、単数形の場合の強勢位置が保持されるのだが、子音 "s" で終わる音節が語尾に加わることで強勢規則から外れ、アクセント符号を伴っていた語が強勢規則に沿うようになる場合がある。この場合には綴りにアクセント符号を取る。

複数形でアクセント符号が不要になる場合
単数形 複数形
común (common) comunes (common)
introducción (introduction) introducciones (introductions)
japonés (Japanese man) japoneses (Japanese men)
inglés (English man) ingleses (English men)


 それぞれのペアで強勢位置そのものは変化していない。アクセント符号のない場合についても強勢の位置に注意して発音を確認してみよう。

アクセント以外の意味を持つアクセント符号

 一音節の語で本来強勢がなかったり、二音節以上だが強勢規則に沿っているのでアクセント符号が不要であっても、アクセント符号をつけることによって同じ発音で異なる機能や意味を持つ語を区別する場合がある。