スペイン語の音 Fonología de la lengua española

3. 2. 二重母音・三重母音 Los diptongos y triptongos

広母音(強母音)・狭母音(弱母音)・「中母音」

 母音は発音の時の口の中の空間の大きさに基づいて大きく「広母音(強母音)」と「狭母音(弱母音)」そしてその中間の「中母音」とに分類することができる。[a]やこれに近い母音は「広母音(強母音)」、[i][u] およびこれに近い母音は「狭母音(弱母音)」、[e][o] およびこれに近い母音は両者の中間にあたる「中母音」だ。

二重母音

 自分ではなかなか意識しづらいが「狭母音」を出すときには舌が上に盛り上がっており、口の中の天井の部分(「口蓋」という)との間が狭くなっている。このような状態で発音される[i][u] の音が他の母音と連続して発音される場合にこれを二重母音と呼ぶ。このような場合、母音は切れ目なく連続して発音され一つの母音から別の母音へと音が連続して変化する。この連続した音の連なりは一つの母音として認識される。二重母音を核とした音節は二音節ではなく一音節だ。

 スペイン語の二重母音は「狭母音(弱母音)」 [i][u] が他の母音と連続して発音された場合に生じる。組み合わせは以下のとおりだ。

 なおここでは音節の区切りに "." を入れて示してある。二重母音が一音節の核になっていることを確認しよう。ただし実際の綴りにはこの "." はない。綴りを見て音節の区切りが認識できるようにしていこう。

 改めて説明するが、"y" の綴りが語尾にある場合 [i] の音に対応するのでこの点にも注意しよう。

「狭母音」+「狭母音」
綴り
"iu" ciu.dad (city)
"ui" cui.dar (to care)
"uy" muy (very)

      発音を確認してみよう。

「開母音」or「中母音」+「狭母音」
綴り
"ai" pai.sa.je (landscape)
"ay" hay (there is, there are)
"ei" rei.na (queen)
"oi" es.toi.co (stoic)
"oy" hoy (today)
"au" au.la (classroom)
"eu" Eu.ro.pa (Europe)

      発音を確認してみよう。

「狭母音」+「開母音」or「中母音」
綴り
"ia" pia.no (piano)
"ie" tie.rra (earth, land)
"io" kios.co (kiosk)
"ua" len.gua (language, tongue)
"ue" puer.ta (door)
"uo" cuo.ta (quota, fee)

      発音を確認してみよう。

三重母音

 三重母音は「狭母音」[i][u] が他の「強母音」あるいは「中母音」を前後から挟む形で連続的に発音された時に生じる。三重母音を核とした音節も一音節だ。

 スペイン語で三重母音が現れるのは動詞が法・時制・主語に合わせて変化する変化形のうちの現在時制・2人称複数主語の場合だ。これ以外ではラテンアメリカの先住民言語から受け継いだ地名などに限られる。

三重母音の例
綴り
"iai" es.tu.diáis「君達が勉強する」動詞 estudiar (to study) の直接法・現在時制・2人称複数主語の変化
"iei" es.tu.diéis「君達が勉強する」動詞 estudiar (to study) の接続法・現在時制・2人称複数主語の変化
"uai" ac.tuáis 「君達が行動する」動詞 actuar (to act) の直接法・現在時制・2人称複数主語の変化
"uei" ac.tuéis 「君達が行動する」動詞 actuar (to act) の接続法・現在時制・2人称複数主語の変化
"uay" Paraguay (Paraguay)
"uey" buey (ox)

      発音を確認してみよう。

狭母音に強勢が置かれると独立した母音になる

 「狭母音」が他の母音と隣り合わせに現れる場合であっても、「狭母音」に強勢が置かれると二重母音や三重母音は成立せず、その狭母音は独立した母音となる。この場合には単純にそれぞれ独立した母音が並んでいるだけであり、音節の観点から見てもそれぞれの母音が核となって複数の音節が構成される。

 このように狭母音に強勢が置かれない場合と置かれた場合とでは音節の数に変化が生じ、その結果としてリズムに違いが生じる。この点については次の「3. 3. 音節と強勢」で改めて説明する。